「でも、それって難しくない?」 「いや、普通はこうでしょ」 「でも、前も失敗したよね」

自分では、意見を伝えているだけ。 相手のために、問題点を指摘しているつもり。

けれど、話すたびに否定された相手には、こんな気持ちが残ることがある。

「この人には、もう話さなくていいか」

否定から入る口癖の怖さは、その場で嫌われることだけではない。

指摘も、相談も、誘いも、少しずつ届かなくなることだ。

しかも、相手は「あなたの返し方が嫌だから、話すのをやめます」とは教えてくれない。

だから自分だけが、変化に気づきにくい。

あなたも無意識に言っていない?

最近の会話を思い出して、確認してみてほしい。

□ 相手が話し終わる前に、反論を考えている □ 提案を聞くと、良い点より先に問題点を口にする □ 「それいいね」より「でもさ」と返すことが多い □ 相手の事情を聞く前に「普通は」「常識的に」と言う □ 「そういう意味じゃないんだけど」と言われることがある □ 会話が「もういいよ」「そうだね」で終わることがある □ 後から振り返ると、相手より自分の方が長く話している

これは性格を判定するテストではない。 数の多さより、どんな場面で、誰に対して出るのかを見てほしい。

外では気をつけていても、家族や恋人、後輩にだけ出ていることもある。

そして、「でも」「いや」という言葉を使ったら、すべて悪いわけでもない。

注目したいのは、相手を理解する前に、訂正しようとしていないか。

① 相談されなくなる

たとえば、後輩から「このやり方を試してみたいです」と言われたとき。

「いや、それ前にもやったけど無理だったよ」

経験からの忠告でも、この返しだけでは、後輩が今回どんな工夫を考えたのか分からない。

同じようなやり取りが続けば、 「考えて持っていっても、どうせ否定される」と、相談を控えるかもしれない。

その結果、否定する側には「最近の後輩は何も提案しない」と映る。

自分が止めた会話を、相手の消極性だと思ってしまう。

ここが、気づきにくい落とし穴だ。

② 本音ではなく、無難な返事が増える

否定されると分かっている相手には、説明するより、合わせた方が楽になる。

「そうですね」 「分かりました」 「おっしゃる通りです」

返事だけを見れば、関係は良好に見える。

でも、本当は納得しているのではなく、これ以上やり取りするのを諦めている場合もある。

反論がなくなったときほど、話しやすくなったのか、話す気がなくなったのかを考えたい。

③ 自分を見直すきっかけを失う

「その言い方、少しきつく聞こえるよ」

そう伝えてくれた人にまで、 「いや、そんなつもりじゃない」と返してしまう。

すると、相手がどう受け取ったかを知る前に、自分の意図を説明する会話に変わってしまう。

悪気がなかったことと、相手が話しづらかったことは、両方あり得る。

そこで一度、

「どの言い方がそう聞こえた?」

と聞けるかどうかで、その後の会話は変わる。

変えるのは、意見より「返す順番」

無理に賛成する必要はない。 問題がある提案を、そのまま受け入れる必要もない。

まず相手が何を考えたのか確かめ、その後で自分の意見を伝える。

たとえば、

「いや、それ無理でしょ」 ではなく、 「どう進める想定? 費用のところが気になってる」

「でも、前も失敗したよね」 ではなく、 「前回とは、どこを変えてやってみる?」

「いや、考えすぎだよ」 ではなく、 「何がいちばん引っかかってる?」

大切なのは、最初に「なるほど」を付けることではない。

自分がまだ知らない事情があるかもしれない、と考えて聞くこと。

もし途中で否定から入ったと気づいたら、その場で言い直してもいい。

「ごめん、先に否定しちゃった。最後まで聞かせて」

この一言があれば、止めてしまった会話を戻せる。

「でも」「いや」で返し続けた先にあるのは、大げんかとは限らない。

表面上は穏やかなまま、誰も深い話をしなくなる。 それが、この口癖の怖い末路だ。

今日、誰かの話に反論したくなったら、意見を言う前に一つだけ質問してみてほしい。

正しさを伝える前に、相手が何を伝えたかったのかを知る。

話しやすい人になる第一歩は、そこから始まる。